単層カーボンナノチューブからの発光

出典: BeansCM

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目次

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単層カーボンナノチューブからの発光

Photoemission from Single-Walled Carbon Nanotubes

概要

 単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の発光(PL)測定は、励起波長に対する発光のピーク強度がCNTのカイラリティに固有であることから、CNTのカイラリティの分布測定のみならず電子状態、励起子、電子-フォノン相互作用などの物性情報を得ることができる。ここではアルコールCVD法とHiPco法で合成されたSWNTsのカイラリティ測定および13C同位体CNTを用いた励起子-フォノン励起の同定について説明する。アルコールCVD法の場合には、HiPco法に比べて直径の分布が狭く、アームチェア型に近いSWNTsの割合が多く、13C同位体置換のSW13CNTsのラマンおよび蛍光励起スペクトル(PLE)から励起子-フォノン散乱に対応するフォノンサイドバンドピークを同定することができた。

PLマッピングによるカイラリティ分布の比較

 図1にはアルコールCVDとHiPco法で合成されたSWNTsのPLマップの比較を示す。それぞれの発光ピークはカイラリティ(n,m)が対応し、励起光のエネルギーはSWNTsの第2サブバンド間の遷移エネルギーE22に相当し、発光エネルギーは最低のエネルギーギャップをもつ第1サブバンド間の遷移E11と呼ばれる。この組み合わせはカイラリティに固有であり、タイトバンディング近似などの理論計算やラマン分光などの結果と比較することで、組み合わせをカイラリティに対応づけることが可能である。

図1 PLピーク強度マップの比較。(a)HiPco法、(b)アルコールCVD法SWNTs。

図2にはそれぞれの方法で得られたSWNTsのPLマップを直径とカイラル角の関数として円の面積で表現した分布を示す。図からアルコールCVD法で合成されたSWNTsはカイラル角が30度に近い側で強度が大きくなっており、アームチェア型に近い構造の存在比が大きくなっていることがわかる。これはSWNTsの初期生成時の核によるキャップ構造の安定性の違いを示すものと推測される。また合成時の温度依存性では合成温度が低いほど、直径の小さい割合が増加し、アームチェア型に近いSWNTsの発光強度が大きくなる。

図2 図1のPL強度とカイラリティの対応図。

PL励起スペクトルと13C同位体置換のSW13CNTsを用いた測定

 PLスペクトルの中には、ナノチューブの軸に平行な偏光による励起に由来する主なピークに加え、起源が明らかでないサブピークも存在する。このピークは電子-電子、電子-フォノン相互作用に関する重要な情報が含まれていると期待できる。 同位体置換ナノチューブはアルコールCVD法によって合成した。図3には通常と同位体置換ナノチューブのラマンスペクトルを比較している。図中の点線はラマンシフトをsqrt12 / 13倍したスペクトルであり、SW13CNTsのピークスペクトルとほぼ一致することから、原子質量の違いによりフォノンのエネルギーがsqrt12 / 13倍となっていることがわかる。

図3 12Cと13CのSWNTsのラマンスペクトル。(a)RBM、(b)Gバンド近傍のスペクトル。

図4には図1と同様にPLマップを図5にはカイラリティ(7,5)のナノチューブに対して、PLE測定をおこなった。図5の右のPLEスペクトルは左のマップで発光波長=1026.5nmのラインを切り取ってプロットしたものであり、価電子および伝導体バンドにおいてフェルミレベルから数えて2番目のサブバンド間の遷移に対応する1.9eV付近の主ピークの他にA,B,Cのサブピークが存在していることがわかる。

図4 12Cと13CのSWNTsのPLマップ。
図5 12Cと13CのSWNTsのPLEスペクトル。

図6にはこれらのサブピークの拡大図を示し、ピークAおよびCはそれぞれE11とE22の位置から210-230meV程度高エネルギー側にあり、E11およびE22とこれらのピーク間隔が通常と同位体のもので若干異なっていることから、このずれがフォノン同位体シフトに対応すること考えられAとCはいづれもフォノンに関連した励起だとわかる。一方のCについて、明確な同位体シフトを示さないことから純粋な電子励起によるものだと考えられる。

図6 それぞれのピーク近傍(a)A、(b)BとCにおける12Cと13CのSWNTsのPLEスペクトル。

文献情報,参考文献

丸山 茂夫*, 宮内 雄平, "単層カーボンナノチューブからの発光," 光技術コンタクト, (2006), vol. 44, no. 3, pp. 137-145.

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