低電流密度から高電流密度域におけるCuPc 薄膜素子のキャリア伝導機構

出典: BeansCM

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健康医療応用デバイス 応用分野 その他(生命科学、基礎研究など)
健康医療応用デバイス 大きさ 分子
健康医療応用デバイス 原理 化学(電気化学、蛍光、pH)


目次

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本稿で紹介する研究の目的は, (1)電流励起型有機固体レーザを実現するために必要な高電流密度を有機薄膜に注入・輸送させること(光励起によるAmplified spontaneous emission (ASE)のしきい値エネルギーから求めた電流励起によるASE のしきい値電流密度は Jth=3.8kA/cm2),(2)低電流密度から高電流密度(nA/cm2 からMA/cm2)における有機薄膜の キャリア輸送過程を解明することである。以前の研究で有機薄膜に高電流密度を注入する ためには, 素子面積の低減と高熱伝導率基板の使用が有用であることが明らかにされてきた。本 研究では, フォトリソグラフィと電子線リソグラフィを用いて素子面積を S=1,000,000μm2 からS=0.04μm2 に制御した際の電流密度-電圧(J-V)特性と最大電流密度 の向上について検討している。また高電流密度駆動に対する耐久性やJ-V 特性の機構解析を行うた めのモデル素子として, CuPc 薄膜素子を作製している。

構造

ITO 基板(陽極)にレジスト膜をスピンコートし, 紫外線もしくは電子線露 光を行った。現像液に浸漬することで, レジスト膜に正方形の貫通孔を形成させた。残っ たレジスト膜は良好な絶縁層として使用でき, 貫通孔に素子を作製することで, 素子サイ ズを正確に定義することが可能となった。作製した貫通孔の上にCuPc 活性層, MgAg 陰極 の順に真空蒸着することで, 素子構造ITO/photoresist insulating layer with a hole/CuPc(25nm) /MgAg(200nm)/Ag(10nm)のCuPc 単層素子を構築し, 室温下でDC 駆動 によりJ-V 特性を評価した。

特性・性能・評価

右図に, 素子面積をS=1,000,000μm2 からS=0.04μm2 に変化 させた際のCuPc 薄膜素子のJ-V 特性を示す。素子面積をS=1,000,000μm2 からS=0.04μm2 に減少させることで, 素子破壊に達する最大電圧がVMAX=5.0V からVMAX=14.1V に増加し, 最大電流密度もJMAX=7.6A/cm2 からJMAX=3.64MA/cm2 に増加した。また低熱伝導率ガラ ス基板(1.1W/mK)から高熱伝導率シリコン基板(148W/mK)に置き換えることで, さらに最 大電流密度がJMAX=3.64MA/cm2 からJMAX=6.35MA/cm2(VMAX=16.9V)に増加した。 この 最大電圧と最大電流密度の増加は, 素子サイズを減少させることで, 素子内で発生したジ ュール熱が周囲のレジスト膜や電極に効率よく取り除かれ,熱による素子破壊が抑制され たためである。また,ITO 陽極からの正孔の 輸送の律速過程が, 低電圧側から(i)Ohm current, (ii)Shallow-trap space-chargelimited current (ST-SCLC), (iii)Trap-free SCLC (TF-SCLC) の順に遷移していること がわかる. 正孔のみ(もしくは電子のみ)のキ ャリア伝導では, TF-SCLC が最も電流を流 すプロセスであり, J=1MA/cm2 以降に現れ ているプロセスは, MgAg 陰極からの電子と ITO 陽極からの正孔の両方が注入された (iv)Two-carrier injection cubic law に従う キャリア伝導と考える。一般的な有機EL 素子はJ=10A/cm2 程度で素子の破壊が生じてし まうが(図中点線がJ=10A/cm2 を示す),素子サイズをサブミクロンまで小さくすることでJ=1MA/cm2 を超えるキャリアを有機薄膜に注入・輸送できただけでなく, 通常は素子破 壊のために観測できない超高電流密度におけるキャリアの輸送過程を解析できるようにな った。

図1 素子面積とキャリア輸送過程の相関

文献情報,参考文献

Observation of Extremely High Current Densities on Order of MA/cm^2 in Copper Phthalocyanine Thin-Film Devices with Submicron Active Areas, T. Matsushima, C. Adachi, Jpn. J. Appl. Phys. 46 (2007) L1179.

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