インクジェット印刷を用いた“紙流路“式の免疫的および化学的検知デバイス

出典: BeansCM

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健康医療応用デバイス 応用分野 検査診断
健康医療応用デバイス 大きさ 細胞
健康医療応用デバイス 原理 その他
安心安全快適デバイス 安全安心センシング センシング対象 生体・バイオ関連指標
環境応用デバイス 環境センシング 分析対象
環境応用デバイス 環境センシング 分析項目 微生物
環境応用デバイス 環境センシング 分析項目 その他
環境応用デバイス 環境センシング 検体認識物質 タンパク質(抗原抗体、ペプチド等)


目次

項目の説明 【必須】

本論文はインクジェットプリント技術を応用した、免疫クロマトグラフィーデバイス製作のためのについて述べたものである。このデバイスは単一のろ紙からなり、ろ紙上にはマイクロ流動用の親水性チャネルがパターニングされ、免疫検知性インクが注入・固定化されている。この“紙流路“式の免疫センシングデバイスは、従来の免疫クロマトグラフィーデバイスが複数のパッド、プラスチックやナイロンによる支持構造、ケースを必要とするのに比べて、単一の装置で製作可能で、製作が短時間かつ低コストで済むという利点を有する。

今回はサンドウィッチ免疫反応を、この免疫検知性の紙デバイス上で感度をヒトIgGモデル検体に対して最適化したうえで行った。製作は、インクジェット印刷されたテストラインおよびコントロールラインの抗体を物理吸収によって固定化したことで、(特に機能化を施していない)純セルロース表面に適用可能な非常に簡潔な製作方法となった。テストラインおよびコントロールラインの色の濃さの識別は、肉眼と、簡単なプログラムと組み合わせたカラースキャナーによる方法との両方で行った。その結果、ヒトIgG濃度は20分以内で少なくとも下限10μg/lまで検出できた。

さらに、複数項目検出可能な多分析センシングシステムとしての可能性を実証するために、同一紙基板上に化学分析用のマイクロ流体チャネルを新たに印刷して、免疫的に加えて化学的な検出も行う複合センシングデバイスを製作した。今回はpH、マウスIgG、ヒトIgGの3つの検知用チャネルを同一紙基板上に印刷し、1回のサンプル滴下で同時平行に検出可能なことを確かめた。この多分析“紙流路“式検知デバイスは低コストであることに加えて、シンプル、ポータブル、使い捨て可能なことから、医療、環境、食品分野における分析での病原体検出へと活用できることが、またさらに遠隔地や途上国で有用となりうることが実証された。

構造

※この「構造」欄に示す図は多分析のものではなく、1チャネルでヒトIgGに最適化した場合のデバイスである。


図1 製作プロセス

図1-aは製作プロセスの概略を示したものである。ろ紙を疎水性ポリマー溶液に浸し、その後トルエンでテストライン、コントロールライン(それぞれ以下、t-line、c-lineとする)をパターニングした。次に免疫検知性インク(t-lineにはAnti-IgG、c-lineにはIgGをそれぞれのラインに印刷し、乾燥した後に残りのチャネルを形成した。全体をBSA溶液に浸してブロッキングして、PVP界面活性剤を適用した後、最後に金標識化されたIgGをスポットした。流路が親水性、その周囲が疎水性ということで流路を形成している。またt-line、c-lineだけを最初にパターニングするのは、インクが漏れ広がることを防ぐためである。 図1-bはパターニングおよび印刷した各部を示したものである。

図2 各部の寸法

図2には各部の寸法を示した。 ※見やすくするため着色している

図3 検知の仕組み

図3は検知の仕組みを示したものである。陽性ではt-lineにバンドが見えることになる。c-lineは流動が生じているかの確認に用いる。

特性・性能・評価

「構造」欄に示したようなデバイスを用いてヒトIgGの検出試験を行った。

図4 免疫的ヒトIgG検出結果例

図4は検出結果の例を示したものである。サンプル滴下から約20分後の測定では、肉眼でもt-lineに発色が見られ、検出できた。色の濃淡をカラースキャナー(256bit)で読み込み、サンプル中のヒトIgG濃度を変え繰り返し測定した。ヒトIgG濃度と色の濃淡の関係をプロットし、校正曲線を描いたところ下図5のようになり、このような半定量的分析によって、少なくとも下限10μgまでは検出可能であることが確かめられた。

図5 データプロットと校正曲線



また次に同時平行に多分析可能な複合センシングデバイスの例として、1回のサンプル液の適用でヒトIgG、マウスIgG、pHの3つを免疫的および化学的に検出することを行った。これは図6-aに示すように、同一紙基板上に複数のチャネルを設けることで行った。その結果、図6-bに示すように同時に検出可能であり、サンプル液適用後から反応に要した時間も、pHの応答に2.5分以内、免疫的応答に15~20分であり、同時平行に行われるため多分析にすることで時間効率のよい検出が可能であった。 なお図6-bのサンプル液成分は以下の通りである。( - はなしの意味)

 サンプル名 || ヒトIgG[mg/l] | マウスIgG[mg/l] | pH

   b-1    ||    0.5    |     0.5     | 6.0

   b-2    ||    0.5    |      -      | 6.0

   b-3    ||     -     |     0.5     | 6.0

   b-4    ||    0.5    |     0.5     | 9.0

図6 複合センシングデバイスの構造・結果

文献情報,参考文献

"Inkjet-printed paperfluidic immuno-chemical sensing device", Koji Abe, Kaori Kotera, Koji Suzuki and Daniel Citterio, Anal Bioanal Chem (2010) 398:885–893

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