高透過率可変焦点液体レンズを用いた共焦点距離センサ

出典: BeansCM

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目次

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 内視鏡等で対象となる生体試料までの距離を計測するためのレンズに関して、提案を行っている文献を紹介する。これまで生体内の位置を計測する方法としては、画像解析を基にその立体形状を推定する方法が報告されているが、体内画像の特徴点が限られており、特徴点の抽出や画像の重畳が困難であったため、正確な距離計測が行われていなかった。

 本文献で提案されている可変焦点液体レンズは、液体材料を高分子膜で封止し、上下の二層の電極で挟み込んだ構造を持っており、上下の電極間に電圧をかけることで焦点距離を変化させることができるものである。また、レーザの焦点位置を走査する外部アクチュエータを要しないため、従来の共焦点光学系よりも小型化が容易であるという構造上の利点を持つ。 本文献では、レンズの作製から光透過率や測定可能範囲の評価、及び生体試料を用いた距離計測の評価が行われており、実際に生体材料への適用性を示唆する結果が得られている。

構造、及び原理

 図1に共焦点距離センサの構成を示す。このセンサでは、共焦点光学系の先端部に可変焦点レンズを配置し、液体レンズを通して対象物にレーザを照射する。対象物までの距離にレンズの焦点が合致した場合には、反射光は共焦点光学系を通してフォトダイオード(LD)に入射する光強度が大きくなる。対象物までの距離に焦点距離が合致しない場合には、フォトダイオードに入射する光強度は弱くなる。

 一方、レンズの焦点距離は液体レンズの上下電極間の静電容量変化を計測することにより求められる。フォトダイオードに入射される光の強度が最大になったときのレンズの焦点距離を静電容量変化の測定から求めることにより、レンズから対象物までの距離を得ることができる。

図1 共焦点距離センサによる計測原理 (a)合焦点時の反射光路、(b)非焦点時の反射光路

作製プロセス

 共焦点距離センサに用いる、高透過率可変焦点液体レンズの作製プロセスを図2に示す。手順としては、以下に示す通りである。

(a)ガラス表面に酸化イリジウムスズ(ITO)層が形成された基板をウェットエッチングすることで下部透明電極を形成
(b)基板表面に疎水性膜を塗布し、ドライエッチングすることでITO電極の周りに疎水性構造を形成
(c)疎水性膜構造中にシリコンオイルを滴下、シリコンオイル表面にパリレン膜を形成
(d)パリレン膜上に金属膜を蒸着、ウェットエッチングでパターンニングすることで可変焦点液体レンズを形成。

図2 高透過率可変焦点レンズの作製プロセス

特性評価

 レンズの光透過率の計測結果を図3に示す。488nm、633nm、785nmの3種類の波長に対して80%を越える透過率を示しており、使用する波長域帯で高い光透過性を有することが確認されている。

図3 液体レンズの光透過率の計測結果


 図4に、可変焦点液体レンズの静電容量変化を焦点距離の関係を示す。このグラフでは、液体レンズに0Vから150Vまで電圧を印加した後、印加電圧を0Vまで除荷した際の結果を示している。静電容量変化量と焦点距離の間には、変形によるヒステリシスがない線形な関係になっていることが確認できる。

図5 可変焦点液体レンズの静電容量変化と焦点距離の関係


 生体材料に対する距離計測が可能かを確認するため、生体材料として鶏肉片(図8(b))を使用し、図8(a)のように配置して光反射計測が行われている。計測結果(レンズの電極間の静電容量変化と反射光強度)は図8(c)のように示される。反射強度が最大値を示している場所では、静電容量がある特定の値(~130pF)を示していることから、ある特徴的な焦点距離の場合に、反射光強度が強くなっていることが分かる。このことは、このレンズを用いた生体試料表面でのレーザ光反射計測により、生体材料までの距離の評価が可能であることを示している。なお、本論文では、実際に生体材料を配置した位置での距離測定との比較から、計測誤差は11%以下であると評価されている。

図5 生体試料までの距離計測、(a)生体試料の配置、(b)使用した生体試料の写真、(c)レンズの静電容量変化と反射光強度変化の関係

文献情報,参考文献

「高透過率可変焦点液体レンズを用いた共焦点距離センサ」、松本潔 他、電気学会センサ・マイクロマシン部門主催 第29回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム論文集(2012年、北九州)pp.20~23

コメント

本論文で提案されているレンズの方式は、小型化が可能なこと、電極配線により光経路の阻害が少ないことが特長となっているが、可動電圧が150V程度であること、実際の応用を考えると可変焦点距離の範囲が狭くかつ長距離であること、計測距離の精度向上等が課題であると考えられる。なお、駆動電圧に関しては、発表当日の質疑応答において、レンズの小型により、駆動電圧を小さくできるのではないかという回答があった。

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