蛍光消光による匂い可視化フィルムの高機能化

出典: BeansCM

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目次

項目の説明 【必須】

 有害物質や爆発物の検知、食品の鮮度計測等、快適で安心安全な生活環境を求める社会的背景から重要性が高まっている「匂い」、「香り」の検知に関する文献を紹介する。本文献の筆者は、有害な匂いの源を特定する意味で匂いの空間的な分布を検知することが重要と考え、その可視化方法を検討している。

 提案されている方法は、匂い物質と蛍光色素の相互作用を用いた蛍光プローブにより、匂いを可視化するものである。筆者らは、これまで、匂い可視化フィルムと冷却型CCDカメラを組み合わせた匂い画像撮影装置の開発により、気体の状態における匂いの視覚的な検知に成功している。本文献では、幅広い種類の匂い物質や複数の匂い物質が混在する場合への対応等、可視化フィルムの高機能化を図るため、予め蛍光色素に相互作用し、蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET=Fluorescence Resonance Energy Transfer)を引き起こす物質を加えたプローブフィルムや複数の蛍光色素を混合させたマルチプローブフィルムの開発を行っている。

装置の構成、原理

 匂いの検知部分には、蛍光色素をシートにした可視化フィルムを用いる。蛍光物質の極近傍に匂い物質が飛来してくることで、蛍光物質と匂い物質が相互作用し、蛍光の変化が引き起こされることを利用して、匂い物質を検知する。蛍光の変化は、冷却型高感度CCDカメラを用いた画像撮影により、分析している。図1に、匂い画像撮影装置の概略を示す。

図1 匂い画像撮影装置の概要


 蛍光色素と匂い物質の相互作用の結果、引き起こされる蛍光変化としては、一般的にPET(光誘起電子励起、Photo-induced Electron Transfer)とFRET(蛍光共鳴エネルギー遷移、Fluorescence Resonance Energy Transfer)が考えられるが、本研究では、予め蛍光物質とFRETを引き起こす物質の混合液をプローブとして用いて、混合液のFRET現象に匂い物質が与える影響(FRETにおける蛍光変化)を見ることで、匂い物質を検知している。これは、これまで単体の蛍光物質と匂い物質との反応による蛍光変化により匂い物質を検知することを試みてきたが、物質選択性が高い反面、幅広い種類の匂い物質を検知するという観点からは、検出物質の範囲が狭くなる課題があった。

実験結果

FRETプローブによる匂い検知

 図2にトリプトファン(蛍光物質)とバニリン(蛍光物質と相互作用しFRET現象を引き起こす物質)の混合溶液を使用した際のフェネチルアルコール(匂い物質)の検知結果を示す。比較のため、蛍光物質単体を用いた検知結果も示されているが、蛍光物質単体と比べて、混合液の方が高い消光率を示しており、検出感度が高くなることが確認されている。

図2 フェンチルアルコールの検出結果(蛍光消光の濃度依存性)


 FRETプローブフィルムを用いたフェネチルアルコールの匂い画像の撮影結果を図3に示す。なお、単体の蛍光物質(トリプトファンのみ)では、検知が不可能であった。

図3 単体蛍光物質(左)とFRETプローブフィルムを用いたフェネチルアルコールの匂い画像撮影結果

マルチフィルムによる匂い検出

 1つの匂い可視化フィルムでは、1枚のフィルムから1つの蛍光プローブ情報しか取り出せないため、様々な匂い物質が混在する状態の可視化が不可能という課題がある。そこで、複数の蛍光色素を1枚のフィルムに集約したマルチフィルムの開発が試みられている。  図4に、マルチフィルムを用いた複数の匂い物質の可視化の概要を示す。予め様々な形状の領域に匂い物質を染み込ませたガラス版を、匂い可視化マルチフィルムシートに近づけて、匂いを吸着させている。

図4 マルチフィルムを用いた複数の匂い物質の可視化の概要


 図5に、複数の匂い物質の可視化の結果を示す。匂い物質の分布形状に応じた消光、増光が確認できる。

図5 マルチフィルムを用いた複数の匂い物質の可視化結果

文献情報,参考文献

「蛍光消光による匂い可視化フィルムの高機能化」、古澤 雄大 他、電気学会センサ・マイクロマシン部門主催 第29回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム論文集(2012年、北九州)pp.43~48

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